ふるさとの山に向かいて言うことなし
私は若い頃、東京へ10年くらい行っていましたので、帰郷した時には、 海 ・ 山に向かってバンザイしたことを・・・ 例年の立山運用でのことです。ある日の午後3時頃だったと思いますが、 40歳位の男性が 小屋に入るなり、 「 大汝のピークはどこですか? 」 と。 私は、 「 あそこですよ 」 と言うと、背中のリュックを降ろし、サッサとピークに登り、黒部湖の方に 向かって、 「 バ カ ヤ ロー 」 と3回大声で怒鳴っているのです。私とアンチャンは、その様子を小屋の 入口で見ていました。男は下ってきて、 「 あー スッキリしました 」 と、缶コーヒーをうまそうに飲んで、 「 ありがとう 」 とニコニコして 「 これで室堂へ下ります・・・ 」と。 人は色々のシガラミや苦悩を背負って登り、この山に捨てに来るのかなぁ と思いました。 この日の夕方近く、4人組みのオバタリアンがピークで黄色い声で、 「 ヤッホー ヤッホー 」 とハモッているのでした。 最初は微笑ましく聞いていましたが、次は 「 オーイ オーイ 」 で、最後は やはり、 「 バ カ ヤ ロー 」 でした。ワイワイ、ガヤガヤ言いながら小屋に入り、 「 トイレはどこ? 」 「 ビールない? 」 「 乾杯しましょう! 」 3人で姦しいと言うが、4人ですからそれはそれは・・・。 「 あなた こんなところで何をしているんですか? 」 と、いよいよ私に質問ぜめです。QSOどころではありません。各局にQRT を出し、オバタリアンとのQSOになりました。こちらは2人、相手は4人。 恥ずかしがり屋の私とアンチャンでは、とても歯が立ちません。そして、 「 最後の あのバ・カ・ヤ・ローはどうして? 」 と聞いたところ、4人は顔を見合わせて、 「 亭主のことよ 」 「 ア ッ ハ ハ ハ 」 恐ろしきかなオバタリアン!! 山の上の開放感からそう言わせるのでしょうか。いまだにわかりません。 混迷の世の中、さぞ黒部湖の底、谷間には「こだま」のかたまりが、漂って、 詰まっていることでしょう。 |