恒例の立山移動運用、単独紀行のことです。 ある年のこと、ようやく大汝小屋で無線の為のセッテングも完成し、 ワッチ(430Mhz FM)に入り、QRVしようとした時、微弱な信号をキャッチしました。 八木アンテナで方向を探るもなかなか取りにくい。 どうやら方角は鹿島槍ケ岳? ハンディトランシーバーだなぁ、山からの反射で入感しているなぁと判断するに 至りました。するとかすかに 「 ワッチ局ありましたら 応答ください 」 私が、 「 こちらは立山大汝/9 JH9IWHです サブ周波数3.10へQSY どうぞ 」 と応答し、サブチャンネルに移りました。 「 こちらはJN1○□△ですが 剣御前キャンブ場へ連絡お願いできない でしょうか 」 「 了解 ハンディのようですので 簡単に用件だけ送ってください 」 「 現在位置は剣岳のふもと大町側にいます 3人パ-ティの一人が足の 怪我で動けません 今夜はここでビバークしますと 先発パーティ の剣御前キャンプ場の○◇さんに連絡願えませんでしょうか 」 「 了解 こちらから連絡しますが そちらはハンディなので電池が もったいないから30分後にワッチしてください その間スイッチ 切って待機! いいですね! 」 「 了解 御願いします 以上 」 案の定、山の影からでした。アンテナの方角が全然ちがう。私とのやりとりを 聞いてた小屋番さんは、携帯電話を持って小屋から離れた見通しのきく崖まで 行き、剣御前小屋へ連絡してくれました。そこからキャンプ場で連絡を待って いた○◇さんへ事情説明し、納得されたそうです。 そして約束の30分後、 「 JN1○△□さん こちらはさきほどのJH9IWHです キャンプ場とは連絡が取れましたので安心ください 」 「 了解 !!! 有難うございました 明日キャンプ場のパーティ と合流して雄山 室堂と下山します そこの小屋で改めて ご挨拶いたしますのでありがとう御座いました 失礼します 」 「 了解 では気を付けて移動してください 73 」 キャンプ場と連絡が付かなかったら、騒ぎになっていたことでしょう。 さて、私の方も出足からこの騒ぎで調子が狂ってしまいましたが、気を取り なおしてQRVしました。 この夜はコンデションも良く、沢山の局からお声掛け戴き、パイル、パイルで 満足の出来るQRVでした。 次の日の昼ごろ、QRVしていると、私のリグの前に大の大人が、5人直立して いるではありませんか。 小屋番さんに聞いたのでしょう、 「 あの人です 」 私はマイク持ちながら、目と目が合うと最敬礼されて、慌てましたよ。 「 私達は△▽市役所の山岳会のものです 昨日は有難うございました 本当に助かりました 心配で捜索願い出そうかと思っていた ところでした 」 「 大事にならなくてよかったですね 」 そのリーダーらしき人がポケットから名刺を出して、 「 またホ-ムへ帰りましたら 改めて御礼いたします 」 「 そんなことしないで下さい 山が好きで来ている者同士ではありま せんか 当然でしょう 山男ってそんなもんですよ ハハハハハハ 」 その間、リーダーらしき人が缶コーヒーをくれて、 「 本当に 有難うございました 」 と皆で缶コーヒーで乾杯。 「 お名前と住所は !! 」 「 ハハハハア 毎年この小屋で遊ばせてもらってる者でいいでしょう。 お互いに知らない者同士の出会いで いつか又どこかの山でお会い しましょう 」 「 そうですか・・・ 時間もありませんのでこれで失礼します ありがとうございました 」 いつのまにか、ガスが出てきました。5人は別れ告げてガスの中に消えて行き ました。 午後からの悪天候とは裏腹に、私の気持ちはすがすがしい気分でした。 社会的立場もあり、大事にならなくて、本当に良かったと思いました。 山にいると色々なことが起こります。忘れられないエピソードの一つです。 |