--- 私の青春時代 その11 ---

( クリスマスケーキ )



 なんと言っても、この世界でのメインは『クリスマスケーキ』。 その時期になると  

チーフは、  

  「 さ〜 日本全国にわかクリスチャンのために頑張れよ〜 」  

と、檄を飛ばすのであります。毎年12月に入ると昨年との比較、今年の目標数など、  

社長から指示があるのですが、それとは別にチーフから、うれしい提案です。  

  「 今年のクリスマスケーキはソフトに美味しく、高級感のある丁寧なものを  

    作る。 さて、そこでだぁ〜 皆にチャンスをやろう〜 一週間後に工場  

    内クリスマスケーキコンテストをやる、各々の良いところを取り入れ採用  

    する 」   

内心、  

  ( ・・・ チャンス到来しめしめ ・・・ )  

私は、日頃試していたり思っていたことをこのケーキに込めようと、仕事が終わって  

からクリームの絞り、バラ絞りを練習しておりました。デザインもいろいろ考え、帳面  

に書いておりました。元来、私は不器用な方で、指もゴツゴツした骨ばっていたので、  

  「 あぁ〜 白魚のような細い器用な指がぁ〜 今更手遅れかぁ〜 ! 」  

とぼやいておりましたら、  

  「 お前は天才じゃないんだから、練習するよりないだろう ? 」  

と、先輩。  

  「 はい、頑張ります 」  

  「 ところで、御曹司は何処へ行ったか知らない ? 」  

  「 いや〜? 」  

  「 あいつ〜 また〜どこかへふけたなぁ〜? 」  

あいかわらずである御曹司は・・・ しかし、憎めないヤツ。  

そこへ階下から、例の女先輩が、  

  「 悪いけど、店が満員なの手伝ってくれない? 」  

  「 いいよ 」  

久しぶりにカウンターに立つと、  

  「 あれーいたの〜? ひさしぶりね〜 」  

  「 ほんとに〜 ね〜 」  

  「 たまに〜 顔〜出しなさいよ〜 」  

まいったね〜 慶応ガールで満席です。軽く頭を下げ挨拶しながら注文をこなします。  

ます。汗ダクダク、  

  ( ・・・ なんなんだぁ〜 これは〜 ・・・ )  

男ばかりの工場から、突然に女っ気ムンムンのこの雰囲気。なんだか、御曹司の気持ち  

が少しは分かるような気がしたが、そんなことばかりはやってられないよね〜  

仕事、し〜ご〜と〜。  

                                               つづく            


                   

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