私達、男子の寮は、通りに面したアパ−トの二階(長屋風)で一階は間口の小さ なお店がずらり並んでいました。 私の部屋の下は「赤ちょうちん」の下がった焼き鳥や。その匂いと煙は、容赦な く、窓から飛び込んでくるのです。 (・・・ ど〜れ テレビでも見て寝るかぁ〜 ・・・) と布団をひき、横になりました。 「 カチ〜ン、カ〜ン 」 と窓に小石が当たる音 ! 「 だ〜れだよ 」 と窓を覗くと、焼き鳥やの前でM子が手を振っていました。 「 ど〜したぁ〜 」 「 暑いから眠れないの〜 散歩しな〜い〜 」 「 あぁ〜いいけどさぁ〜 しょうがない人だなぁ〜 」 「 お昼においしいもの作ってあげたでしょう? 」 「 弱いところを突いてくるねぇ〜 」 「 うっふふふふ 」 車の騒々しい音を横切り、一本裏道に外れると、静かな夜道です。 M子は片手にうちわ、下駄履き、私はサンダル。 「 カラン、コロン、パタ、パタ 」 と妙な足音のハーモニー? 暫く歩くとM子は、 「 そうそう〜 私、いいとこ思い出したわ〜 」 「 んん〜 なんなんだぁ〜 」 「 ピンポンできる〜? 」 「 ピンポン〜 卓球のこと〜? 」 「 そうそう〜 それよ〜 」 「 いや〜 子供の頃にすこ〜しやった事あるけど〜 」 M子は“ニヤリ”とほくそえんでいます。 「 なんなんだよ〜 こんな遅くにそんな事出きる店でもあるの〜 」 「 それがぁ〜あるのよ〜 お店じゃ〜なくて〜 」 「 えぇ〜? 」 「 行きましょう〜 へいき、へいき 」 「 へいき、ね〜? 」 それは、或るタクシ−会社の大きな立体駐車場の屋上であった。 つづく |